「痛ぁ〜〜いっ!」
「…派手な音立てて、器用にぶつけたんやね」
「そんなので感心してないでよっ!」
思い切りぶつけた額を手で撫でていると、蓬生が呆れ顔で近づいてきた。
「感心もするわ。まさか閉まってるドアにぶつかる…なんて、予想も出来へんかったし」
「うぅ〜…」
「あーあ…赤うなって…。女の子が顔に傷なんてこしらえたらあかんよ」
「え?うそっ!?傷になってる?」
「…見せてみ」
額を押さえていた手を、蓬生の手がそっと剥がす。
そのまま、じっと見つめられる視線がなんだか恥ずかしくて、視線を横に逸らした瞬間…音を立てて額に口づけられた。
「っ?!」
「大丈夫。傷にはなっとらんよ」
「そ、れは…いいんだけ、ど…」
「どないしたん。今度は頬が赤うなっとる」
そういって頬に添えられた手は、少しひんやりとして冷たい。
そう感じるのは、それだけあたしの頬が熱を持っているから…というわけで。
「こっちも、舐めて治して欲しいん?」
「はぁ!?」
「仕方のない子やね。……ほな」
「うわっ、ちょ、顔っ!ち、近いからっ!」
「舐めるんやから、近づかんと無理やないの…」
「舐める必要ないからっ!」
っていうか、もしかして額も舐められたの!?
「必要がないんやったら…不用意に怪我なんかせんことやね」
囁くと同時に、頬に柔らかなものが押し当てられた後、まるでクリームでも舐めるように頬を舐められた。
「ふひゃあ!」
「………もう少し色っぽい声あげてくれんと、面白ないわ」
「ばっ、ばかっ!!」
「馬鹿で結構…ほな、赤うなった耳も…頂こか」
甘い吐息と共に、耳元へ囁かれた声。
でも、そのおかげだろうか。
ぶつかった瞬間は痛くてたまらなかった額が、今は…なにも感じなくなっている。
「おい、芹沢。紅茶だ」
「…………………」
「芹沢。あれは無視して、紅茶だ」
「……は、はい…部長」
人前だろうがなんだろうが。
全く気にしないでいて貰いたい。
付き合いだしたら、目に入れても痛くないぐらいべたべたすればいい。
めっちゃ執着して貰いたい、そんな気がする。
ある意味くせになる人かもしれない(笑)